従来のミューラルやストリートペインティングとは異なり、イベントとして企画された特殊なケースです。
私たちは「出演者」としてクレジットされており、常に視線にさらされながら普通に描く様は新鮮な体験でした。
新聞にも掲載され、反響も大きいようです。
のぞき込めば空

コメント:
暖かい野外で寝そべって空を見上げていると、ふと「空に落ちそうになる」ときがあります。
上下の感覚が一瞬、変になるときです。
この絵はそれの逆で、床をのぞき込んだにもかかわらず見上げた景色が現れる構成です。
見下ろしているのに見上げているような変な感覚、しかし春の空気に触れると多少変なことがあっても気にならないものです。
絵を描いている姿そのものを、通行人に開放して”芸”として披露します。
本当は何週間もかけてデザインした原画なのですが、見ている人にはその場で思いついて描いているように見えたらしいです。




アライグマと思った人多数。レッサーパンダです。


見る場所によって絵の特定の部分が主人公に見えるように構成された構図。
ある場所では桜が大きく目に入り、ある場所では緑の丘や動物が中心に見えるという具合に、どの角度から見ても何らかの主人公が現れるようにオブジェを配置しています。
絵に近づくと、よく見ないとわからない小さな動物や花もこっそり書かれています。

床の大理石素材を利用した画面四隅のだまし絵。
現場のエントランスは大理石の床であるため、これを利用して彫刻のだまし絵を四隅に配置します。エレガントな仕上がり。

完成後はしばらくの間そのまま展示され、最後には撤去となります。 普段は何年、何十年も持つ壁画を描いているので、この刹那的なイベントは新鮮でした。
春の暖
なんばウォークのストリートチョークアートパフォーマンスは、少し離れた二箇所で同時に行われました。
こちらはもうひとつの作品、なんばウォークのマスコットキャラクターを前面に打ち出した「春の暖」です。
制作中の様子





ある場所から見ると、床に這いつくばっているいくつかのものが起き上がってくるように見えるかもしれません。暖かくなると自然に活動的になるものです。
さて憂いてばかりいられませんので、暖かさを利用して首をもたげてみましょうかという気持ちも、多少こめてみました。
ストリートペインティングの醍醐味は立体的に見えるように描くトリックアートです。
一定の方向から見た場合に立体的に見えるよう、遠近法を用いた構図になっているので正面から見ると飛び出して見えます。横から見ると間延びした姿をしています。

正面から見れば飛び出して見えます。 横から見ると間延びして描いていることがわかります。
絨毯や平面におかれた絵画などは特に飛び出して見える必要がないため、床面に現実そのままの姿で描いています。このことにより、飛び出している部分との差違が発生してトリックの効果を高めます。
オブジェクト
春の暖 制作中の様子



この作品には雑多ないろいろなものが無造作に描かれています。
絨毯の模様、源流の景色、ヨーロッパの町並みとファンタジックな船、マルチーズのスケッチ、桃の枝、猫、花籠・・・それぞれが技法的に独立しており、レパートリーの見本市の様を呈しています。


トリックに相応しいオブジェクト
トリックアートで立体的に見せることができるのは「高さの低いもの」です。
高さを表現するために、実際には奥行きを長く伸ばして描きます。
目線の高さに近づけば近づくほど描くために奥行きが必要になり、極端に言うと「目線と同じ高さのものが立ち上がっているように見えるには、地平線の彼方まで描かなくてはならない」ということになってしまいます。
そのため、床に描くトリックアートで高さを表現するのは、せいぜい数十センチどまりです。
多くのストリートペインターはこの問題を解決するために「床が掘られている」という設定の絵をよく作ります。
目線の高さから下方であればあるほど、立体的に描く奥行きが短くて済むからです。
初出:2004.03.25
細井工房




